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秘められた名前4 [『ベルサイユのばら』 another story]

ふふ、みなさんどうでした?
面白かった?

これからがこの小説の最大の山場ですよ。

これってオスカルのいわゆるひとつの「ヰタ・セクスアリス」ってところかな。

狩のシーンがありますが、あとから考えてみると、「ある公爵夫人の肖像」
のジョージアナ扮するキーラ・ナイトレーのコスチュームがこの場合の

アンリエット扮するオスカルのコスチュームに似ているかな…。


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あの映画はよく出来ていて、ローブ・ラングレーズがいかに美しいいものかってことが
よくわかるいい映画です。

もしご覧になっていない方がいるとすれば、機会があればご覧くださいね。


わたしはラクロの『危険な関係』がものすごく好きで、
ちょっとその要素をちらり、とだけど入れたつもりです。(だけどあんなに過激じゃない)

あと、ジェイムズ型の小説ってのも気に入っていて
だいたい男女が二組いて、初めはお互い離れていて、その後二組集まって、
やがて離れていく、というX型の恋愛っていうのも、入れて見たかった。

まぁ、あんまり関係ないですけど~。(笑


書いていて感じたのは、
オスカルが自分の本来の性に目覚めるような話を書く場合、
どうしても、肝心のオスカルがなよ~っとなってしまいがちなんですね。
ま、当たり前なんだけどね。

しかし、オスカルはいつも凛々しいからオスカルたらしめるんで、
やっぱりね、きりっとしてもらわないと困る!

でも、やはりそこはそういうふうに流れていき過ぎない工夫が必要なんですね。(笑)
だから、ところどころ、躾けなおして、きりっとさせるためのページが必要なんですな。ウン。

こうやって書いていると実際のところ、オスカルって本当はどんな顔をしていたんだろうな、
ってよく考える。

まぁ、背は178センチっていうからそうとう高いよね、
そういうモデルさんとか女優さんがいるかな、と探すと
もう、ユマ・サーマンが抜群に高くて180センチ以上あります。

あと、そうね、オルガ・ギュリレンコは176センチ、
ミラ・ジョボヴィッチは174センチ、
あ、ニコール・キッドマンも高そう、180センチぐらいありそう。

まぁ、欧米って平均ってものがそもそもないような気がする。

でも、フランスはどっちかというと、逆説を言うようだけど、平民はそんなに背が高くない。
オスカルみたいなのは、もう平民から見たら雲を突くような大女だと思うよ。

だけど、貴族はそもそもフランスの土着の人の血が混じってないから背が高いのです。
それに、栄養がいきわたっているし。

で。案外男の人も190センチってな人も結構いるから、そんなにオスカルみたいな女性も
肩身の狭い思いはしなかったんじゃなかろうか、と思います。


そして、外見ですが…、案外お化粧してないときは、そっけない顔してるように思うのよね。
眉毛もまつ毛もこの人は色素が薄いから金色。
色が白くて、まぁ、目だけが冴え冴えと青かった…。

ふと、そこでバージニア・ウルフの「オーランドー」の映像が頭をかすめるのね。
あの話、好きそうで好きじゃなかったけど、映像的に好きだったかも…。
オーランドーみたいな無表情だったんではないかと…。
それをそのままトランスレートしたら変だけど。


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で、化粧するとがらっと表情が変わるんだろうねぇ。

わたしの中でも、レベッカ・ホール(この方、めちゃくちゃ好きです!)とか、エヴァ・グリーンとか、
そういう人を頭に置いて書いてます。
レベッカ・ホールなんて、「それでも恋するバルセロナ」に出てるときは、
すごく生真面目で背が高いだけの色気のない優等生みたいな役どころで
美人なんだろうけど、スカヨハばかりが輝いているような印象である反面、
イギリスのドラマの「パレーズエンド」に出ているときは
これがあのときと同一人物かっていうくらい、妖しく美しく、ひたすら美しい。

美しいという範囲には、顔の造作じゃなくて、スタイルがかなりの割合をしめるよね、私の場合は。
レベッカ・ホールはね、手が長い、頸が細くて長い。顔はいくらでも彼女を越える人はいるだろうけど、
こんだけ長身で細身で、ドレスがかっこよく映える人はいないですよ。ハイ。
きれい、じゃなくて、この人はかっこいいのね。うん…。

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レベッカ・ホールが男前すぎて、
結構長身なはずのクリストファー・カンバーバッチもちんちくりんに見えますね。笑


うん、どうもそういうタイプじゃないかって思うんですよね、オスカル。
普段は地味な感じがして…。

アンドレはなんだろう…?
造形的にはどうなんでしょうかね。
わたしが好きなタイプの男優さんの型は決まっているんだけど、あまりそういうの想定して
書いてないかなぁ。

ただ、ちょっとモデルにしているかどうかっていうのは別にして
アラン・ドロンって意識してます。
というのも、あの人のおじいさんかおばあさんっていうのが、
クロアチア系のイタリア人だったそうなのね。

クロアチアの男性っていうのは、平均で190から2メートルぐらいはあって、
180センチ代だと小柄なほうに入るそうです。

そう、それで「エリック・バナ」がクロアチア出身と聞いて、なるほど!と納得した覚えが…。


たしか、塩野七生さんも米原真理さんも仰っていましたが、
で、「あんなにアラン・ドロンがハンサムなのはクロアチア人の血を引いているからだ」と
断言しておられたのが、妙に頭に残っていて、
それで、アンドレが純粋なガリア人だけの血で構成されている人間だったら、
とうてい190センチなんかになれるはずがない、と思い、
「クロアチアの血が入っている」ってアンドレ自身に言わせてますけど…。



わたしはどうしても映像から入っていくタイプで、
自分自身も「読む映画」を目指しているので、
こういう造型的ディティールにはこだわってしまいます。




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オーギュスタン




 ヴェルサイユの屋敷から、ジャルジェ家の所有の森であるシェブルーズへの道を一台の馬車が走っていた。
透明で明るい光が、緑したたる林冠の間を通り抜け、これから行く道の先々を点々と白く輝かせていた。馬車の中には新緑にも負けないほど若々しさに輝く男女が一組乗っていた。

 この日のオスカルはあらかじめ姉と打ち合わせた通りに、白い粉がふられ複雑な形にあらかじめ結われた鬘を付け、その上に乗馬用の帽子を被り、目にも鮮やかなロイヤルブルーの乗馬服を着ていた。ロイヤルブルーというのは用心に用心を重ねて、お互いの瞳の色の違いを隠すための手段だった。
 乗馬服は基本的には襟の詰まったブラウスにクラバットを巻き、その上から上着をはおる。構造的には男も女も一緒で、違いがあるとすれば、女はスカート、男はキュロットというところだけだ。夜会服とは違い、肌の露出がないのでそれほどうろたえることもなかったが、オスカルはやはりこんな格好をすること自体緊張すると感じた。そもそも軍服を脱ぐという行為そのものが、心の鎧を取られたようなおぼつかない気分にさせるのだ。
 だが実のところ、姉の強引な申し出を一方的に押し付けられて、断り切れなかったわけではなかった。断ろうと思えば、今まで断ることもできたはずなのだ。
 オスカルも自分でも自分の気持ちを量りかねていたのだが、結局のところ、コンビエーニュでマクシミリアンに会ったときから、この話を断りたくなかったのだ。いっときにせよ、いやいっときで終わらせることができるからこそ、アンリエットの代わりに婚約者であるマクシミリアンとふたりきりで過ごすという誘惑から逃れることができなかった。
 最初からこの貴公子にどことなく惹かれていた。それならば渡りに船とばかり、姉の身代わりとなってこの魅惑的な人の恋人になるという夢にひそかに酔ってみたかったのだ、誰にも知られることなく。
 そんなわけで、オスカルは自らの意志でヴェルサイユから二時間ほどの道のりを、こうしてマクシミリアンとふたりだけで馬車で同乗していたのだった。

 一方のアンリエットは別行動で、他の人間と一緒に騎乗してシェブルーズへ直接向かっているはずだ。
ふたりにとって一番問題なのがこの場合、アンドレの存在だった。オスカルとアンリエットは話し合って、なるべくこの日はアンドレを姉に近づけないように画策した。ただでさえアンドレは聡くて鋭敏だ。それに今までずっと、どんなときにもオスカルと一緒に行動を供にしてきた男だ、たとえ見かけはそっくりでも、いやそっくりだからこそ、あるじのすべてを知悉している彼は必ず、アンリエットに違和感を覚えるに違いない。だからアンドレは前日からシェブルーズの森番のところへ行かせて、今日のための猟犬や銃、そして昼食のための食材や料理人の手配をさせ、そしてさらにコースの整備などの準備をさせるように言いつけてあった。このことに対しては、いつものことなので別段不審がる様子はなかった。
 今一番、オスカルにとって自分の気持ちを悟られてほしくない人物、それはアンドレだった。

「今日は本当にいい天気ですね。狩をするには絶好の日よりだと思いませんか?」
「え、ええ」
 あれこれオスカルがぼんやりと考え事をしていると、マクシミリアンが声を掛けてきた。
「どうしました、アンリエット?」
「え、ええ。いえ、いいえ」
「ふふ、どちらなのですか、アンリエット」
「あ、あの、あの…。…申し訳ございません」
 気をつけようとすればするほど、声が震えてしまう。我ながら女になった自分は世慣れていなくて、てんでだらしがなかった。マクシミリアンはそんなオスカルを観察するように見ていた。
「アンリエット。あなたはなにかどこかとらえどころのない不思議な方ですね。昨晩は舞踏会であんなに女王のように堂々として、周囲をひれ伏せさせるかのような威厳を持っていたのに、今日のあなたは…なんというのか、とてもデリケートでロマンティックだ。今はまるで臆病な森の精と一緒にいるような気分です。まあ、しかしこれはこれで非常に捨てがたい魅力がありますが…」
 自分には理解できないながらも、婚約者が今感じている不安を取り除いてやろうと思ってか、マクシミリアンは大きな掌で婚約者の白魚のような手をすっぽり覆うと、力強くぎゅっと握ってきた。そんなことを今までに誰にもされたことのないオスカルは、飛び上がらんばかりにギクッと身体を震わせ、顔を真っ赤にさせてしまった。
―あ、駄目だ、駄目だ。こんなふうにはアンリエットは決してならない。もっと冷静にならないと―。オスカルは焦った。
「ひどく緊張しているのですね、手がぐっしょり汗ばんでいますよ。なにか心配ごとでも?」
 そういわれて、オスカルはぱっと手をひっこめた。
「あ、申し訳ございません。汗ばんだ手など…。みっともないこと…」
「いいんですよ、アンリエット。これから長い人生を一緒に連れ添うんです。もっとリラックスしてください。わたしとあなただけなら、遠慮なさらずに本当のことをおっしゃってください」
 ―ああ、なんて心地いい声なんだろう、深くてよく響く―。マクシミリアンの男らしいけれども、繊細な顔だちという二律背反している容貌も好きだったが、声もいいとひそかに思った。自分でも知らぬうちにびろうどのようなこの声にもっとくるまれていたくて、つい目を閉じてしまった。だがそれを、どうもマクシミリアンは声に出さない拒絶と受け取ったようだった。
「アンリエット…、わたしはなにかお気に障ることをしたのでしょうか?」
マクシミリアンは目を閉じてうつむくオスカルの顔を、切なげにのぞき込んで問いかけてくる。
「いいえ、とんでもないことでございます。戯れにもそのようなこと、どうぞおっしゃいますな」
 至近距離で相手の顔を凝視してしまった。その瞬間、相手の目とばっちり合ってしまう。思わず恥ずかしさでぎゅっと目をつぶりそうになったが、やっとのことでこらえた。―なんてわたしは子供っぽいんだろう。なんて子供っぽい対応しかできないんだろう…―。そんな気持ちを推し量ったかのように、相手はさりげなく距離をそっと開けてくれた。だが感に堪えないといったふうに感動を込めてつぶやいた。
「なんと美しい瞳だ、あなたの瞳はあなたの心のうちを反映して光り輝いている…。こんなに濃いサファイア・ブルーだったのですね。まるで生きた宝石だ」
 オスカルの胸は震えた。自分を女性として認め、褒めてくれる男性がこの世にいようとは―。だがかろうじて、それ以上に秘密を悟られてはならないという義務感が先に立った。このときばかりにはとっさにことばを言いつくろった。
「いいえ、マクシミリアンさま。これは服がきっと青いせいでございますわ。本当はもっと緑っぽい色ですの」
 マクシミリアンはどういうわけか、話題を変えた。
「あなたとオスカル・フランソワさまは本当によく似ておいでですね。どっちかどっちとわからないくらいよく似ていらっしゃる」
「そうでしょうか…。オスカル・フランソワは普段、男の格好をして軍隊におりますから、わたくしなどはつい、妹ではなく弟のように感じてしまって、それほど似ているとも思えないのですが…」
 オスカルは少しカマをかけて相手の反応を伺おうとした。
「いいえ、そんなことはないですよ。ちょっとしたしぐさなども本当によく似ておいでだ」
 マクシミリアンは目を窓の方に転じてしばらく外を見た。そしてふと思いついたように言った。
「でもオスカルさまは外見は勇ましいけれども、本当はとてもかわいらしい方なのじゃないかとお見受けしました」
「え? さようでございますか? どこがでございましょう?」
 ついつい興味に駆られて、自分のことをマクシミリアンがどう思っているのか知りたくなった。
「そうですね…。あの方は軍服でご自分を守っていらっしゃって、容易に男をよせつけようとしませんが、実はとても純粋なのじゃないかと思うのですよ。ただ…彼女は恋をまだ知らないのでしょうね…」
 オスカルはどきりとした。アンリエットにも以前同じようなことを言われたからだ。
「そういえばわたしにも、自分に非常によく似た人間がいるのですよ」
「マクシミリアンさまに?」
「ええ。でもあなたがたのように、姉妹というわけではないのです。従弟でね。父方の叔母の息子なんですが…。たぶんあなたより、ひとつ年下の十六歳でまだ少年ですが…。周りの人間が、彼がわたしの少年のころと生き写しだというんですよ」
「ああ、さようでございますか…。さようでございますね。似ている、似ていないというのは案外、本人同士はわからないものでございますものね」
「ええ、そうなのです。この間までまるっきり子供だったのですが、この一二年でぐっと背も大きくなって大人っぽくなりました。とはいえ、まだ背ばかり伸びているので案山子みたいですがね。まぁでも、おいおい身体のほうもできてくるでしょう…。従弟の家も軍人の家で父親が元帥なのです。ちょうどわたしがここへくる少し前に彼もブラッシュアップのためにグランド・ツアーに出かけました。そのうち、彼もフランスにやって来ると思いますよ」
「さようでございますか…」
 ―マクシミリアンとそっくりで自分と同い年の人間か…。こんなに神のように完璧な人間がふたりいるというのは不思議な気がする―。

 突然馬車がガタンと衝撃を受けて止まった。不審に思い、オスカルは窓から顔を出して御者に問いただそうとした。
「どうしました? なにごとです?」
 言ったとたんに窓枠に銃弾が当たって、跳ね返った。
「!」
 オスカルは突然の襲来に、本来の武人である自分に戻った。
「マクシミリアンさま! 大丈夫でございますか?」
「わたしは大丈夫です。アンリエット、あなたこそ大丈夫ですか?」
「わたくしも大丈夫でございます、なんといいましても将軍の娘でございますから。それより敵が再び襲ってくるでしょう。わたくしに思うところがございます。どうぞお任せあれ。とりあえずマクシミリアンさまはこのまま、気絶したふりをなさっていてくださいませ!」
 てきぱきとオスカルはマクシミリアンに有無を言わさず命令をした。気絶したふりをさせ、その上にオスカルが覆いかぶさるように仰向けにもたれかかった。
「もたれかかって重とうございましょうが、しばらくの間ご辛抱くださいませ」
「あ、ああ」
 なにがなんだかわけがわからず、マクシミリアンはオスカルの言われた通りにした。しばらくその恰好のままでいると、男が馬車の戸をガラっと開けた。
「おやおや、まだまだお天道様が高いってのに、こんな狭いひとつところで姉ちゃんと兄ちゃんが仲良くふたりでおねんねとはね! なんともまぁ!」
 男はマクシミリアンの上にもたれているオスカルの手首を乱暴につかんだ。その途端、力を抜いていたオスカルはぐいっと男の手首をつかみ返し、自分の方に引き寄せて男の急所を蹴り上げた。悶絶している男の後ろにも、もうひとり男が馬車のすぐ側に潜んでいて、気色ばんで剣を振りかざそうとした。しかしオスカルは懐中に潜ませていた短銃を取り出すと、すばやく撃鉄を起こし、その男の右手を狙って撃った。
「うぎゃっ!」
 最初に襲ってきた男の腕を逆手にひねりあげ、脱臼させてしまうと男の背を後ろから蹴りあげ外に出した。
「言え、何者だ? 誰に頼まれてこんなことをした?」
 思いがけずめちゃくちゃに強い美女の反撃に会い、男が恐怖に震え、首謀者の名前を口にしそうな気配があると、急にうぐっと口から血をごぼごぼと吐いて息が絶えた。口封じに銃を後ろから撃ち込まれたのだ。オスカルは死んでしまった男の帯剣していた剣とまだ発射されていない銃を、その腰から機敏に抜き取ると身構えた。
「出てこい! 銃を一度撃ってしまったら、弾を込めるのに時間がかかるはずだ。出てこないのならば、その間にわたしはおまえを撃つ!」
 オスカルは言い放った。
「弾はこの方向から飛んできた。ということはおまえはそこにいるはずだ。はん、撃たれた角度と距離を逆算すれば容易にわかることだ、いいか? こっちからいくぞ!」
 オスカルは躊躇せずに撃った。その途端に風になびいている叢から、ひとりの男が肩を打ち抜かれて悶絶していた。
「三人か…? いや、まだ敵はいるかもしれない…。それにしてもなぜ?」
 この間のパリで王太子妃付き女官長であるノアイユ伯爵夫人を襲った事件からそう日は離れていない。もしかしてあの事件とこの事件は繋がりがあるのだろうか―。オスカルは銃を持ったまま、悶絶している男に目を注いだ。
 この男もおそらくは一番の下っ端で、この間の事件と同様、誰かに金をつかまされて実行にしたに違いない。問題はこの事件の首謀者は誰か、ということだ。
 腰を落として男の懐を調べた。すると内ポケットから革袋が出て来た。口を開けるとルイドール金貨ばかりが入っていた。オスカルはそれを見て思わず頭をひねった。これはただの金目当ての犯行とは思えない。やり口に違和感があった。
 今の事実を不審に思う一方で、オスカルは別の方向にもてきぱきと頭が動き、ものかげに隠れて身を縮ませている御者に向かって尋ねた。
「おい、おまえ。縄を持っているか?」
「あ、は、はい」
 御者はあたふたと鞍の中の道具箱から縄を取り出した。それを受け取ると、てきぱきとオスカルは馬車につないであった三頭の馬を外すと鞍を乗せた。
「おまえ、今からこれに乗って、一走りして父上と屋敷の人間をここへ呼んできてくれ。わたしたちも味方がここに到着し次第、マクシミリアンさまをお連れしてシェブルーズの城館にまで行く。わかったな!」
 少しして、はっと我に返ったオスカルはマクシミリアンの様子を見に馬車の中へ戻っていった。
「マクシミリアンさま、ご無事でございますか?」
 公爵はどういうわけか、目を閉じたままオスカルが馬車を離れたときと同じ姿でいた。さては、男が押し入ったときに強く頭でも打ったのではと、マクシミリアンのほうへかがんで様子を見ようとしたとたん、大きな手がオスカルの手首をつかんで自分のもとに引き寄せた。
「アンリエット! びっくりしましたよ、内気なあなたがこれほど勇敢とはね…」
 ―あ、まずい。口調がいつもの自分に戻っていた。マクシミリアンに聞きとがめられなければいいのだが―
「マクシミリアンさま…!」
 急にマクシミリアンが手首を握りしめたまま起き上がって、オスカルを引き寄せて自分の膝に乗せた。―仮にもこのわたしとあろうものが、姉の婚約者といえど、男のひざに腰を落とすなんて―。びっくりして立ち上がろうとするのに、ものすごい力でぎゅっと抱きすくめてきて容易に解放しようとしなかった。
「知っていましたか? アンリエット。わたしも一応、故国では軍人なのですよ…。一連隊自分の軍隊を持っているのです。あなたのさっきのなさりようは、とてもとても並みの女性の立ち振る舞いとは違うようにお見受けしましたが…。まるでオスカル・フランソワさまがぼくのアンリエットに成り代わってここにいるのではないかと思ったくらいですが…」
 オスカルはどうすればこの場を切り抜けられるのか、必死になって考えを巡らせた。
「マクシミリアンさま…。どうぞお放し遊ばして。人が参ります」
「こんなに魅力的な方に恋をせずにはいらない、…目の前にいる方がどなたなのであれ」
 マクシミリアンはオスカルの胸中を知ってか知らずか、妙に人の心をもてあそぶような物言いをした。


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 結局のところ策が尽きて、困り果てているオスカルを見て苦笑しながら、その一方ではどこか非常に満足げな公爵は、いかにも惜しいといったふうに不承不承その手を緩めてくれた。
「ねぇ、アンリエット。聞いてください。わがスウェーデンは従兄であるグスタフ国王が王位につかれたばかりで、なにかと揉め事が絶えないのですよ。政情不穏とでもいいますか…。不穏分子が至る所に隠れています。たぶん今度のことも、それに関係あるのかもしれませんね」
「さようでございますか…」
 オスカルは素早く頭を巡らせた。スウェーデンのお家騒動がこのフランスに飛び火してのことだろうか…? その可能性も捨てきれないが…。しかしまた、マクシミリアンは不穏なことを言いだした。
「ですが、あなたのように可憐でしかも、これほど勇敢な方がわたしの妻となってくれるのであれば、これほど心丈夫なことはありませんね、アンリエット…」
 オスカルは自分を偽っていることへの心苦しさを感じた。わたしはアンリエットではない。たぶんアンリエットもそこそこ勇敢ではあるだろうけど…。
 そうこうしているうちに、騎乗したジャルジェ将軍とオスカルに扮したアンリエット、家令である執事、そしてアンドレが、猟犬であるフランセ・トリコロールの一群を率いてやって来た。
「マクシミリアン殿、ご無事か?」
 ジャルジェ将軍は血相を変えて尋ねた。
「フランス滞在中に、将軍家の内でスウェーデンの王族の方を怪我させたとあっては、面目もござらぬ。アンリエット、おまえは背の君殿をお守り申し上げることができたのか?」
「ええ、お父さま、なんとか…」
「将軍、アンリエットはなんとかというレベルではありませんよ。わたしなどのつけ入る隙もないほど、わが婚約者殿はたったひとりで、敵をあっという間にやっつけてしまいました。ジャルジェ家の人間は姫君でもこんなに勇敢で獰猛なのですね。風にも堪えぬという楚々とした風情であられるのに、まったく」
 公爵はこらえきれずにクックッと笑いを漏らしながら話した。
「はは、アンリエットはたしかにオスカル同様、剣も射撃もいたしますからな…。少しでもお役に立てたのなら喜ばしいことです」
 将軍はマクシミリアンが無事なのを確認するとほっとしていた。オスカルも一時は正体を見破られたのではないかとひやりとしたのだが、なんとか悟られずに済んだと思い、父親と同様にほっとした。ところがそこに突然、一匹のボルゾイ犬がオスカルめがけて飛びついて来た。
「ネージュ!」
 犬は嬉しさのあまり千切れんばかりに尻尾を振っている。ネージュと呼ばれた犬はオスカルの愛犬で、狩りに行くときに必ず連れていく犬だった。ネージュはたとえどんな格好をしていようと、においで本当のあるじを嗅ぎ当てている。今アンドレはこの光景を眉をひそめながら見ているに違いない。背を向けているが、オスカルは焼け付くような視線を痛いほど感じて、冷や汗をかいた。
「ネージュ。どうしたのですか? 今日はいやに仲良くしてくれるのね。おまえのご主人はあちらよ?」
 オスカルは必死で取り繕った。ちらりとアンリエットを見ると、やはり少し困ったという顔をしていた。だがジャルジェ将軍はそんなことにはまったく頓着せず、怒りに駆られこう言い放った。
「まだ、他にも敵は潜伏しているかもしれん。オスカル! おまえはアンドレと一緒に、犬どもを解き放してみろ! 不埒な者どもを狩り出してやるのだ!」
 今ここで、アンリエットとアンドレを一緒にさせるのはなんとしても避けなくてはならない。だがアンリエットはオスカルに扮している以上、自分からやりたくないとは言えない。ここはひとつ自分から芝居を打つしか手がない。
「オスカル・フランソワ!」
 オスカルは自らに命名された名前を呼んだ。
「はい、姉上」
 アンリエットはオスカルを演じながら、少し緊張気味に答えた。
「オスカル…。わたくしは無我夢中でマクシミリアンさまをお助け申し上げましたけれど、今になって少しふるえてしまって…。気分が悪くなってきました。マクシミリアンさま、ここで少し失礼させていただきます。オスカル、わたくしをあなたの馬に乗せてちょうだい。お父さま、わたくし今夜のこともございますし、一足先にオスカルと一緒に屋敷に戻ることにします…」
「大丈夫か、アンリエット」
 心配そうに将軍は娘を気遣った。
「ええ、お父さま、オスカルがついてくれていたら大丈夫ですわ。さあ、オスカル。参りましょう」
「はい、姉上」
 アンリエットは馬上から手を差し出した。その手をつかむと、貴婦人がするにしては鮮やかすぎるほどにひらりと跳躍して鞍に乗った。
「どうっ!」
 アンリエットがピシッと馬に鞭をくれ拍車をかけると、姉妹はヴェルサイユに向けて駆け出して行った。
「ふむ、どうもアンリエットは急いているみたいだったな。どうしたのだろうな、アンドレ」
「さあ…。わたくしにはお嬢さまがたのこととなると、皆目わかりかねますので…」
 いつもと違い、やや慇懃無礼にアンドレは答え、暗い表情で遠のいていく馬の姿を見送った。

「姉上、もうこれ以上は無理です。何度心臓が止まると思ったことか…! 似ているのはしょせん、外側だけなのです。入っているたましいが違うのだから」
「あらまぁ、そんなことはないわ。なかなかさまになっていましてよ。ただ馬に乗るところだけは、ちょっとエレガントさに欠けていたかしらねぇ」
「馬に乗るのはもう、意識するとかしないとかの問題じゃない。呼吸をするのと一緒です。なのにわざと下手に乗るというのは。気持ちが焦っていてはなかなかできるものではありません」
「まっ、失礼ね。わたくしは下手じゃないわ。あなたのように曲乗りができないというだけよ。それに馬にまたがろうとしたでしょ? あれだけ横座りの練習をさせたのに。わたくしが脚をとっさに叩いて直してあげたから事なきを得たものの…」
「あれは痛かった…!」
「嘘おっしゃい!」
「あははっ」
 オスカルとアンリエットは馬に乗りながら、だんだんと緊張が解けていくにつれ、口のほうも滑らかになり、お互いに憎まれ口をたたき合った。ここは誰も見ていないのだからふたりとも童心に帰って思いっきり笑った。
「たまにはこうやって貴婦人のようにゆったり乗るのもいいのかもしれませんが、どうも性に合わない」
「あら、オスカル?」
「ちょっといいですか?」
 アンリエットの前に乗っていたオスカルは誰も見ていないと高をくくって、スカートのすそをまくり上げると端折って、さっと場所をアンリエットの後ろへ移動した。
「すごい技ね」
「馬なら、片足だけでも乗れますよ。なんせ曲乗りが趣味ですから」
 さっき姉にいわれた憎まれ口をそのまま使って応酬した。アンリエットは言い返そうとしたが、やめた。オスカルがこれからなにをするのか判ったからだ。
「さぁ、姉上、ギャロップでヴェルサイユまで一気に駆け抜けますよ! しっかりわたしに捕まっていてください」
「やっ!」
 オスカルは馬の腹を軽く蹴ったかと思うと、すごいスピードで走りだした。ふたりとも疾走する馬と一体となって風のように駆け抜ける快感に身体をゆだねていた。身体をすり抜けていく風が気持ちいい。
「すごいわね、オスカル。こんなのって初めてだわ」
「そうでしょう、姉上。きっと姉上もお好きだと思っていました。お別れするまえにこうやって、一緒に乗って差し上げたかった」
「オスカル…」
「今夜、うちでの結婚披露の舞踏会が終われば、すぐにおふたりで陛下に拝謁して、結婚の勅許をいただくのですね」
「ええ…」
「本当はここで結婚式を挙げて、せめてお父さま、お母さまにわたくしの晴れ姿をお目にかけたかったのですが、あちらはプロテスタントですから」
「ああ、なるほど…」
 姉が結婚のために、自分が心の支えにしていた信仰を捨てなければならないのは辛いことだとオスカルは残念に思った。しばらくふたりとも黙っていたが、オスカルのほうから口を切った。
「そこまで両親のことをお考えなら、やはり姉上自身がご自身の本来の役割を果たされるべきなのでは?」
「ふ、いいのですよ。わたくしはこれまで何度ということなく盛装を凝らしてきましたから。おふたりとも見慣れているわ。それよりもやはりやりたいのよ、わたくしは。あなたをね」
「ですが…。ネージュを見たでしょう? きっともうアンドレはわたしたちを勘ぐっていますよ」
「だからどうだっていうの? もう賽は投げられたのよ。たとえアンドレでもどう言えて? 結局彼もわたくしたちをあそこで引き留めることはできなかったのよ、いったん事が始まってしまったら、もう誰にも止めることはできないわ。だからわたくしたちの勝ちよ! こうなれば最後まで無事に終わらせるしかすべはないのだから」

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 アンリエットの例の鏡の部屋に入ると、ずらっと夜会用のドレスが並べてあった。おしゃれの好きな女性ならばため息のでるようないずれも贅を凝らしたものばかりだった。
「素晴らしい夜会服ばかりですね」
「ええ、そうね」
 アンリエットはなぜか夜会服をみて浮かぬ顔をした。
「どうしたのですか…」
 オスカルは浮かぬ顔のわけを尋ねた。
「たぶんね、オスカル。こんなに素敵なドレスを作ってお嫁に行ったところで、あちらではきっと袖を通すこともないと思うのよ」
「どうしてですか…?」
「それはスウェーデンというお国柄のせいです。あちらの人はフランスの人間よりずっと保守的なの。きっとこれを見てマクシミリアンさまのご母堂さまは『軽佻浮薄で、はしたないフランスの風』と眉をひそめられるでしょうね。そうなると、わたくしだってあきらめざるを得ないでしょう?」
「そうなのですか…」
 こんなにもファッションやおしゃれを愛している姉なのに、とオスカルは気の毒に思った。
「だからね、オスカル。遠慮しないで自分が着たい、アンリエットとして最高に美しく見えるとあなたが思えるような夜会服を選んでちょうだい」
 オスカルが選んだのは、最新流行のローブ・ア・ラングレーズというスタイルの夜会服だった。これまでの宮廷の主流はローブ・ア・ラ・フランセーズとよばれるもので、ポンパドゥール夫人がそれを着て、一世を風靡したドレスだった。胸に「階段」と呼ばれる、ウェストに向けてだんだんと小さくなるようにリボンがいくつもつけられ、裾を引くように背中からボックスプリーツのトレインが出ているものだった。が、やはり時代は移行しており、この形式のドレスは重々しすぎ、かしこまりすぎるきらいがあった。それに比べるとラングレーズのほうがはるかに軽やかだった。
「このほうが後ろ姿がきれいに見える気がします」
「そうね、あなたのように上背があって、姿勢のいい人にはぴったりよ」
 オスカルは自分の選んだ、ブルーグレイの絹のドレスの袖や裾を手に取ってみた。ため息がでそうなほど精緻なレースが幾重にも重なっている。
―自分の中にずっと眠っていた女心が覚醒した気がする。こんなに気持ちが高揚するなんて! ああ、わたしはどうしたらいいのだ―。

 一方アンリエットは、オスカル自身が舞踏会では全く着たことがない大礼服をその身体にあてて、鏡の前ではしゃいでいた。
「オスカル、見て! 素敵!」
 子供のように喜んでいるアンリエットを見てオスカルは思わず大笑いしてしまった。
「あははっ、姉上! 自分で自分を素敵と言ってしまうんじゃ世話がありませんね」
「あら、だってご覧なさい。どう見たって素敵じゃありませんか? こんな魅力的な殿方が他にいるかしら?」
「すごい自信ですね、姉上」
「だって…」
「ああ、わかりました、言いたいことは。でもたしかに客観的にみても素敵ですよ」

 夜もだいぶ更けたところで、ジャルジェ家主催のアンリエットのための結婚披露の舞踏会華やかに開催された。宮廷に伺候を許されている主だった貴族はたいてい招待されており、みなジャルジェ家の美しい五女と北欧の貴公子が連れ立っているところをみようと押しかけてきていた。
 オスカルの着付けが終えようとしているところに、すっかり支度が整ったアンリエットがやって来た。
 肩章や金色の飾緒が華麗に施された重々しい大礼服に身を包んだアンリエットは、オスカルの目からみても非常に凛然として見えた。氷の花のように人を容易に寄せ付けない一種独特の威厳が感じられる。アンリエットの姿を見て、客観的に見て自分は人からこのように映っていたのかと感慨を深くした。それならば、今ここにいる自分はきっと本来の自分ではあるまい、あくまでアンリエットに見えるように扮装しただけなのだから―。そう考えると妙に安心できた。なぜなら鏡に写る自分は、想像を超越していたからだ。アンリエットがそれを見て言った。
「あらまぁ、きれいにお仕度ができたこと! どこから見ても立派な貴婦人よ、オスカル・フランソワ」
「そうでしょうか?」
「ええ。立ち上がってこちらにいらっしゃい」
 アンリエットがオスカルのほうに白い手袋をつけた手を差し出した。オスカルはおずおずと裾を教えられた通りつまんで姉のほうへ体を向けた。
「そうそう、そうよ。美しいわ。もっとこっちにいらっしゃい」
 アンリエットはオスカルの腰に手を廻して、ダンスを始めた。
「ええ、なかなかいい感じよ。踊りのときはもっと相手の顔をしっかり見つめてね…。そうそう指先にも気を遣って、やわらかいシルエットを保つように気を配るのよ…」
 最後の最後までアンリエットはチェックを怠らなかった。こういった完璧主義なところはきょうだい共通の性癖かもしれなかった。
「一度舞台に上がったなら、後戻りはできないのですよ、オスカル。常に自分はアンリエットであるということを意識して行動しなさいね。困ったことがあればまず、アンリエットならどうするかを常に念頭に入れて行動すればいいの」
「はい、姉上」
「大丈夫、あなたならできる」
 アンリエットはそれから、忘れていたことを思い出したように言った。
「それからね、オスカル・フランソワ。これは絶対に忘れないようにして欲しいのですが、今晩十二時になったら、いったん踊りは引き上げて、薔薇園のあずまやのほうにきてほしいのです」
 アンリエットの目の中に妙に真剣なものが宿っているのを見てオスカルは不思議に思った。
「薔薇園のあずまやで? なにかあるのですか…」
「いいえ、特に。たぶんあなたとわたしが、プライベートで語らえる最後になると思うのよ。だからせめて…最後のお別れを告げる場所は美しいところでと思っているの…。時々過去を思い出すよすがとしてね…。わがままを許してくださいますでしょう…?」
 そんなことばを聞くと、オスカルもついほろっときてしまった。
「ええ、もちろん。では十二時に」

 まばゆいほどのシャンデリア。そしてその灯りを反射してきらきらと輝く貴婦人たちの首飾りのダイヤモンド。さながら大広間では、人々の熱狂は最高潮に達していた。
 アンドレは広間の端にいくつか作られたカウンターの内側に入って、シャンパンの給仕を黙々とこなしていた。そこへひとりの近衛士官が彼の前に現れた。
「よう、アンドレ」
「これはジェローデルさま。ようこそ」
「今日は給仕をしているのかい。よくまぁ、いろいろと業務をこなすねぇ。君は実に優秀だね」
「いえ、そんなことは…まぁ、使用人ですから」
 ジェローデルはいつもと違う肌ざわりをアンドレに感じていた。
「わたしも一杯もらおうかな」
「どうぞ」
「ん、ありがとう」
 アンドレはジェローデルにシャンパングラスを渡した。ジェローデルは受け取ると広間の真ん中のほうを見つめて言った。
「大尉とアンリエットさまが踊っておられるな…。美しいきょうだいだね、実に」
 それを聞いて、アンドレは皮相な笑いを顔に浮かべた。それを見てジェローデルは不審に思った。
「どうした、アンドレ? なにかわたしはおかしなことをきみに言ったか?」
「いえ、ジェローデルさま。もし、あのふたりが入れ替わっているとしたら、どう思われます?」
「なんだって、オスカルさまとアンリエットさまが…? そんなバカな」
 もう一度ジェローデルは踊っているふたりを凝視した。
「アンリエットさまがオスカルさまに成り代わるのはそんなに難しいことではないのかもしれない。しかしだ、万が一にもオスカルさまが、あのジャルジェ大尉が、アンリエットさまに成り代わるなどとは絶対に考えられない」
「どうしてです? 彼女も女ですよ」
「アンドレ! きみはずっと大尉の側に付き従ってきたのだろう? わたしは知っている。あの方は男以上に男だ。すばらしい才能、すばらしい心映え。統率者としての抜群のカリスマ性。大尉は女だとしてもただの女じゃあない、女神だよ。それも知恵と戦いの神であるアテナイのこの世における具現だ。それをアンドレ、きみともあろうものが…」
 ジェローデルのことばには少し怒気が混ざっていた。心酔し尊敬する上官を愚弄する発言を、よりによってその従者がしたからだ。
「ふふ、ジェローデルさま。わたしだからこそですよ。今のオスカルは単なる操り人間です。たましいが抜けてしまっている。北欧の優男の手練手管の色仕掛けにかかってしまっては、さしものジャルジェ大尉もいちころなんですよ。」
「え? なんのことだ、アンドレ」
 ジェローデルは少し気色ばんでいった。
「いえ、独り言です。過ぎたことを申し上げました。どうぞお忘れください」
 そしてアンドレはさらにひとりごちた。
「さあ、ここからが思案のしどころだな。なんせ今まで戦士としてのみ純粋培養されてきて、男の免疫がからきしないときているからな。そんな人間をたらしこむのは赤子の手をひねるより容易いことだ。さてオスカル、おれは、おまえをこのまま行かせるべきか、それとも引き留めるべきなのか。どうする?」

 申し込んできた男性陣とひとしきり踊ったオスカルはほっと一息ついた。時計を見るとそろそろ真夜中にさしかかろうとしていた。
 オスカルはアンリエットの恋人たちとも踊った。この前、ラ・トレムイユ少佐が突然訪れて抱きしめられたときは、あまりにびっくりして頭が真っ白になったが、あのあと、頭を冷やしてよく考えてみれば、彼らの行動はあくまでも姉に対してとった行動であって、自分に対してとられた行動ではない。そう思えば気が楽になり、踊っている間中繰り返される恨み言も笑って流してしまえるだけの余裕もできた。しょせん、こういったことは今だけのことなのだから。そこへジャルジェ将軍が近づいてきた。
「アンリエット、父と一緒に踊ろう」
「はい…」
 とうとう姉が夢みた瞬間がやって来たはずだった。すっかりオスカルのことをアンリエットだと思い込んでいるジャルジェ将軍。オスカルはあんまり目を見開いて、その目の色を父親に悟られてはならないと用心した。
「どうした、アンリエット。勝気なおまえが黙っているなどと珍しいではないか…」
 ジャルジェ将軍は笑って言った。だがその微笑みはどこかしら影を帯びていた。
「そんな。お父さま」
「おまえが生れたときのことを思い出す。ついこの間、生まれたと思っていたのにもう嫁に行くか…。月日が過ぎるのは早いものだ…」
 将軍は感慨深げに言った。
「わたしはな、アンリエット。おまえにはわたしのあたうる限りの力を使って、特別によい縁談を選んだつもりなのだ。おまえは王位継承者三位の男の妻になる。畏れ多いことだが将来、今のスウェーデン国王になにかあった場合、マクシミリアン殿が王位を継がれる可能性も大いにある。あるいはおまえが将来産むであろう男子が王位につく場合もな。おまえは王妃にも王太后にもなれる可能性があるというわけだ。またそうなるのに相応しい人間だよ、おまえは」
「…」
「アンリエット、おまえに言って聞かせることがある。おまえはわたしを恨んでいただろう、うん?」
 突然将軍はひみつの匂いのこもった話を切り出した。
「わたしはただ思いつきでオスカル・フランソワを男子として育てたのではない。わたしには実はおまえを選ぶという選択肢もあった。知っているか? おまえにも男子の名前が付いていることの意味を?」
「えっ、意味ですか?」
「アンリエット、おまえの洗礼名はジョゼ・マリー・オーギュスタン・アンリエットだ。おまえはまかり間違えばオスカルの代わりにオーギュスタンと名乗って軍人になっている可能性もあった…」
 オーギュスタンとはジャルジェ将軍の名前、フランソワ・オーギュスタン・レニエ=ド・ジャルジェにちなんで名づけられたものに違いない。しかしオスカルは、そこに深い意味はないと思い込んでいた。
「わたしが…?」
「なぜかわかるか? オスカルが資質的に、とても家を継がせられない人間である可能性もあったからだ。おまえたちを幼少期まで育てて、ふたりとも男子としてふさわしくなければ、やはり神が定めた通りの運命に従って女子として育て、潔く自分の計画をあきらめる心づもりもしていた」
「お父さま。それは…?」
 あまりに衝撃的なことばにオスカルは二の句が継げなかった。
「つまり誰でも将軍家の跡継ぎとして育てていいなどとは思っていなかった。能力のないものに大勢の兵隊の命を預かる将校など任せられないからな。ただおまえたちは他の四人の姉と比べても、ふたりながら容色にすぐれ、身体能力も高く、かつ格段に頭が切れた。だから最終的におまえたちのどちらかを選ぼうと思っていた」
「では…、なぜわたくしが選ばれず、オスカルが選ばれたのですか?」
 オスカルは思わず口走っていた。
「それはな、アンリエット。おまえはあまりに頭が切れすぎたからだ」
「え? それはどういうことですか…?」
「軍人として生きるには、ある意味愚直でなければならん。どんなにそうしたくないと思っていても、ひとたび上から右を向けといわれれば、右を向かねばならん。たとえ本当は白であっても上官が黒と言えば、黒だと従わねばならん。軍人には犬のような愚直さが必要なのだ。そういう意味でオスカルは資質的に適った人間だった。だがおまえは、歯向かう人間だ。自分に正直すぎるのだ。自分の能力を恃みにして自負心があまりにも強すぎる…。そしておまえのような人間は組織で生きることはできん。だから選ばなかった」
 オスカルの目から涙がともどもなくあふれて頬を伝った。
「お父さま…」
「なにを泣いている、アンリエット。悔しいのか、おまえが選ばれなかったことに」
「いいえ、いいえ。お父さま…いいえ」
「どうした、アンリエット」
 ジャルジェ将軍はぽろぽろ泣く娘を側に引き寄せて、ぎゅっと抱きしめた。
「アンリエット。わたしは軍人だから、お上手をいうことなどないし、ことさらに不必要なこともいわない。だが別れるにあたってこれだけは覚えておいて欲しい。おまえはわたしの大事な自慢の娘だ。幸せになってほしい。そしておまえは賢い娘だから、たとえ運命に翻弄されて逆風が吹いて来ようと、自分の才覚で立ち向かっていけるはずだ」
「お父さま…!」
 ―誰でもよかったわけではなかった―。オスカルは感極まって嗚咽が出そうになり、片手で目頭を押さえた。
「お父さま、申し訳ございません。涙が止まらなくて…。どうかお許し遊ばして」
 オスカルは我を忘れて、テラスを抜けて外へ駆けだした。そこでひとしきりひとりで泣いたあと、姉との約束を思い出した。ジャルジェ将軍と踊ったときはそろそろ時計は十二時になりかかっていた。早く薔薇園へ行って姉を待たなくてはと思い、ひとり暗闇に紛れて歩いて行った。

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 夜の庭園は暗い。街灯もなにもついていないから、しばらく目が慣れるのを待ってから目的地まで歩いた。今は薔薇の盛りとあって、薔薇園に近づくにつれ、闇夜の風に混じって花の香がした。
 オスカルは父親に告げられたことばを、道中幾度も幾度も嚙み締めた。
父親はなにも気まぐれにオスカルを男として育てたのではなかった。彼女の中にある能力をきちんと吟味した上でのことだった。そして自分を圧倒するほど才知に恵まれたアンリエットでなく、自分のこの不器用なまでの愚直さも解っていてくれていたのだ。オスカルの心の中には、これまでずっとわだかまっていたなにかが氷解するような気がした。
 ローマ風のあずまやに足を踏み入れると、すでに先客が着ているようだった。
「姉上…?」
オスカルは声を掛けた。だが姉とは違って、もっと身体の大きな人間が、いきなり彼女を息も止まらんばかりに抱きしめて来た。
「…!」
「マクシミリアンさま! どうして…?」
 なぜかそこにいるはずのアンリエットはいず、いるはずのない公爵がいた。
「どうしてもふたりっきりになりたかったのです。それでオスカル・フランソワさまにお願いして、あなたとふたりっきりになるように取り計らってもらったのです」
「えっ?」
 アンリエットが? 信じられない思いでオスカルはそれを聞いた。どうして今、婚約者たるマクシミリアンとふたりきりになる必要があるだろう。もう父親のジャルジェ将軍とも踊ったのだし、自分の役目はすでに終わったはずだ。公爵とのことは、あれはあくまでも一時的にこっそりと恋人の気分だけを味わいたかっただけなのだし、本当に彼とそういう間がらになりたいわけではなかった。それになにより、姉のアンリエットがオスカルの秘めたる思いなど知るはずがなった。
「愛しています。わたしはあなたに夢中なんです…」
 マクシミリアンは熱い愛のことばをささやく。オスカルは焦った。このままではまずい。なんとか切り抜ける方法はないものか―。またもや、彼女はこの窮地を脱するのに必死になって頭を巡らせなければならなかった。
「マクシミリアンさま、どうぞお願いでございます。なにも訊かずにわたくしに誓うと仰ってくださいませ」
「それは狡いものの仰りようですよ。中身を教えてくださらないのに、どうして誓うことができましょうか」
「いえ、でも…。それならどうか、このアンリエットをお信じくださいませ。そしてどうぞ、どうぞ、誓うと仰ってください」
「そうふうに言われると弱いな。では誓いましょう。わたしはどうしたらいいのですか?」
「はい、なにも訊かずに今宵のアンリエットには、愛の誓いも熱い抱擁もなしにしてくださいませ。ただ、今宵限りでございます。明日になれば、アンリエットはすべてあなたさまのものでございます」
「ふっ、なにやらおとぎ話めいていますね。今夜のあなたにキスをすると呪いの魔法が解けなくなってしまうのでしょうか?」
 オスカルはじっと公爵の目を見つめていった。
「ええ、そういうこともありますわ」
「わかりました。それではあなたをこのまま無罪放免にしてあげましょう。ただ、これだけはいいでしょう。あなたの額に兄として心からの接吻をすることなら…」
 オスカルはそのことばに嘘偽りはないかもう一度相手の瞳を凝視した。
「ええ、それでは妹としてならお受けいたします」
「では、目を閉じてください」
 オスカルは言われるがままに目を閉じ、額へ接吻されるのを待った。目を閉じながら公爵の両手が自分の肩にそっとかかるのがわかった。
「!」
 気が付けば、オスカルは再び力の限りに抱きしめられて、くちびるを奪われていた。

 オスカルは必死になって男の腕を振りほどこうと渾身の力を込めて抗った。だがそのいましめはびくともしない。このときほど女の身を呪ったことはなかった。おしつけられている公爵のくちびるはいつまでたっても、自分から離れようとしない。思わず大きく息をしようと口を開けた瞬間に、さらにマクシミリアンがオスカルの口腔深く侵入してきた。今まで知らなかった圧倒的で官能的な力が、自分を支配しようとすることを悟って戦慄した。
「や、やめて!」
 オスカルが悲鳴のような叫びを漏らすと、マクシミリアンはさすがにやりすぎなのを悟ってやっと引いた。
「お、おやめくださいませ」
 オスカルは柄にもなく震える声で懇願していた。気が付けば目から涙がにじみ出ている。
「なぜなのです、マクシミリアンさま! わ、わたくしに誓うと仰ったではありませんか! 卑怯です」
「いいえ、わたしは卑怯なんかではありませんよ。わたしは、アンリエットにはキスはしないと誓いましたが、あなたはアンリエットじゃありませんからね、オスカルさま」
「えっ」
「そう、あなたはアンリエットじゃなく、オスカルだ。わたしは最初からわかっていました。朝から馬車に乗っていたのはアンリエットじゃなく、オスカル・フランソワ、あなたなのだと」 
 オスカルは絶句してしまった。やはり見破られていた…。
「いつも堂々としているアンリエットが今日に限って、こんなにナイーヴで世慣れないのか…。それはあなたがアンリエットではなく、オスカルだからです。たとえ見た目は一緒でも、中身はまったくの別人格だ。そしてわたしはそんなあなたが愛しくてたまらない、オスカル・フランソワ」
「このまま、わたしのものになってください、オスカル、いえ、オーギュスティーヌ」
「えっ? なぜその名を…?」
「あなたはオスカル・フランソワという名前もありますが、もうひとつ父君から名前を授かっていたはずだ、オーギュスティーヌと…。違いますか?」
 オスカルはあまりのことで口が利けない。
「なぜそんなことまで…?」
「父君であるジャルジェ将軍はあなたが生まれたとき、万が一のことも考えて、あなたが女に戻った場合の名前を用意されておられた。アンリエットにご自身の名をお与えになったように、あなたにも同じようにご自分の名をお与えになったのだ、それも女性形でね…。用意周到なことですね。だからあなたの名前はオスカル・フランソワ・オーギュスティーヌでしょう?」
 マクシミリアンはじわじわとオスカルとの精神的な間合いを詰めて来た。
「お願いです、信じてください。たしかにわたしは今まで数々の恋愛をしてきました。しかしあなたに出会ったときにわかったのです。わが生涯の伴侶は誰なのかを…。わたしはアンリエットではなく、オスカル、あなたを、あなただけを愛している、心の底から。わたしだけがあなたを縛っているこのいましめから解放させることができるのです。オスカル、わたしと共にスウェーデンに来てほしいのです。そして女性として新たに生きる決心をしてほしいのです」
 女として新たな人生を生きる?
 もうオスカルはもう口を利くどころか、ぴくりと動けもしない。まるで彫像のように固まって立っていた。風を伝って屋敷の喧騒がここまで漏れ伝わってくる。―ああ、このままこの人を振り切って屋敷まで駆けて行くことができたなら! 思わず心の中で叫んでいた。―誰かわたしを助けてくれ―
 
 ほどなくふたりの前へ黒い影が立ちはだかった。
「失礼いたします、公爵さま」
 それはアンドレだった。マクシミリアンはアンドレの姿を見て気色ばんだ。
「どうしたというのだ、いきなり。無礼ではないか」
「はい、申し訳ございません。ですがわたくしは、自分のあるじを迎えに参りました」
「なに? おまえのあるじだと? オスカル・フランソワさまはここにはおられぬ」
「いいえ、どんなに他に人の目を欺くことができたとしても、わたくしが幼少よりこの身を挺してお守り、お仕えしているあるじを決して見誤るようなことはしません。このわたくしの命に代えても惜しくないほど大切なあるじとはオスカル・フランソワさまです。どうぞ、公爵さま、わたくしにあるじをお返しください」
「よかろう、おまえはたしか…」
「はい、わたくしはオスカルさまの従者でアンドレと申します」
「そうか、アンドレだな。アンドレ、おまえは帰れ。わたしは今、オスカルさまに求婚をしているのだ、おまえの出る幕はない」
「はい、申し訳ございません。ですがわたくしは、オスカルさまが長じられるに従い、いつかこのような日が来ることを想定された旦那さまの命を受けて、今ここにいるのです」
 そういってからアンドレは目顔で合図を送った。それを見たオスカルは救われたような顔をし、はじかれたようにその懐へ駆け込んだ。その光景を見ていたマクシミリアンは少し気をそがれたような表情をした。
「ジャルジェ将軍の命だと?」
「はい、わたくしは軍人として生きておられるオスカルさまの行く手を阻む、すべての障害を見越してつけられた護衛でもあります。ですから公爵さま、もしオスカルさまに求婚なさいますなら、まずはアンリエットさまのご縁談を破棄なさって、その上でオスカルさまへ正式に求婚のお話しを改めて旦那様になさるのが筋でございます。これではまるで農民どうしの野合のようでございますから。それは正しい求婚とは申せませんでしょう…?」
 たしかにアンドレの言う通りだった。
「アンドレ…。言わせておけば…」
「はい、お怒りは重々解っております。ですがわたしは今自分のなすべきことをしなければなりません。それからでも間に合いますでしょう? お仕置きを受けるのも…」
 アンドレはさっと抱き上げると、小声でささやいた。
「オスカル、もう大丈夫だ、ほら」
 そしてマクシミリアンをきっとにらみつけた。
「これからオスカルさまをお部屋にお連れします、お疲れのご様子ですから。よろしいですね、公爵さま」
「待ってくれ!」
 マクシミリアンは叫んだ。
「オスカルさま。先ほどの無礼は重ねてお詫びします。ですがわたしのあなたへの愛は誓って真実です! わたしはこのまま明け方までここで待ちます。そして聞かせてください。あなたのお返事を」


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ド・ブロイ公爵

管理人様、こんばんは。


さて、オスカル様、女優では誰になるか、という話ですけど、私の場合は顔でなくて胸の膨らみの余り無い女優さんですね。
でも、最近の女優は豊胸手術していて、私が興味を惹く女優さんは余りいませんね。デコルテむき出しのドレス着た時の余りの胸の立派さにはっきり言ってドン引きする場合が多いです。顔はオスカル様だなあ、と感じてもね。鎖骨がくっきり出て肋骨も浮きだつくらいの胸ではなくては、と思ってます。

アンドレの場合です。

>「あんなにアラン・ドロンがハンサムなのはクロアチア人の血を引いているからだ」

とありますが、思い当たる俳優がいます。
それは、あのジョージ・クルーニーの出世作となった米ドラマ「ER緊急救命室」でクルーニーの後釜として抜擢されたルカ・コバッチュ役のゴラン・ヴィシュニックです。
ヴィシュニック、黒髪で長身で何かを背負った感じのシブい俳優でした。又、実際にユーゴスラビア内戦で軍人として参加した経験があるようで、アンドレの雰囲気にぴったりの俳優だと思いますよ。


by ド・ブロイ公爵 (2016-12-23 20:54) 

sadafusa

ド・ブロイ公爵さま

再びコメントありがとうございます!


>私の場合は顔でなくて胸の膨らみの余り無い女優さんですね。

そう! わたしも昨今の巨乳ブームどうにかならないか、と思っています。
あれみて実際に喜ぶ男性どんだけいるのかなぁと思いますよ。
乳牛じゃあるまいし、
アニメですら幼い顔しているのに、爆乳なので絵として美しくないです。

そう、オスカルはもともと細身なんでしょ?
だからそれに見合った胸であればよいのです。
胸ばっかり大きいのは本当に不自然で気持ち悪いし、
なにより美しくない!

そのほうがよっぽどきれいな色気があって美しいです。
そういう意味で、レベッカ・ホールを選びました。
彼女は細いなりの胸をしています。

鎖骨が美しい人なんですよ。



ご指摘くださったゴラン・ビシュニックさんですが、画像検索してどんなお顔をなさっているのか見てきました。

たしかにジョージ・クルーニーのあの濃い雰囲気はありますね!長身だし。たぶん素敵な人なんじゃないかなと思います。
こういう画像だけでは、その人の本当の素敵さっていうのが
なかなか伝わらないもんだと思いますので。

わたしが見るところ、
草刈正雄とロバート・パティンソンを足して二で割った感じがします。

動いていたら、また別な印象なんでしょうけどね…。



by sadafusa (2016-12-23 21:28) 

ド・ブロイ公爵

「オーランドー」の作者は管理人様が書いておられるように、バージニア・ウルフですよね。
神谷美恵子さんという有名な精神科医がかつておられましたけれど、母が持っていた神谷さんの著作の中で、晩年に神谷さん、ウルフを研究対象にしたいと書いておられましたね。

そのバージニア・ウルフ、興味が無かったんですが、意外な本の中で名前を見つけました。母の本を読んで15年以上経った頃です。
「世界の悪女たち」(M・ニコラス著、木全冨美香・岡田康秀訳、現代教養文庫、1989年11月刊)の『スキャンダラスな人妻』の章にてです。
バイオレット・トレフューシス、という人物を扱った章の中にありました。バイオレット、あのエドワード7世の愛妾のアリス・ケッペルの娘です。現英国皇太子のチャールズ皇太子の妃のカミラ妃の祖母のお姉さんに当たるんです、確か。

本では、そのバイオレットとバージニア・ウルフは同性愛者だった、と。
又、バイオレットとヴィタ・サックヴィル・ウエストとも同性愛者だった、と。

ヴィタ・サックヴィル・ウエストとは、「エドワーディアンズ」の作者で、2013年に河出書房新社から初邦訳が出ています。
「エドワーディアンズ」の作者紹介では、ウルフの「オーランドー」はヴィタに捧げられた、と書いてあり、主人公のモデルもヴィタだ、と。

私としては、「オーランドー」のDVD見てみたいです。
この3年ばかり、親の事で忙しかったので、見てみたいです。第二次世界大戦前の貴族文化全盛時代のドキュメンタリー・ドラマ・映画共に大好きなんで。
by ド・ブロイ公爵 (2016-12-28 15:23) 

sadafusa

ド・ブロイ公爵さま

カキコミありがとうございます。
コメント興味深く拝読しました。

わたくし不勉強でして「エドワーディアンズ」も作者のサックスヴィル・ウエストも存じ上げませんでした。

ですが、近日中にどうしても読みたくなるような内容ですね。ものすごく惹かれます。

が、読んでいてレズビアンということばから、つい、バイアットの小説「抱擁」とまた、フランス20世紀の金字塔ともいわれるマルセル・プルーストの「失われた時を求めて」を思い出しました。

たしか、抱擁の話のキーを握るクリスタベルも、失なわれての主人公の恋人のアルベルティーヌもレズというか、バイセクシャルなのですねぇ。

このふたりはもともと身分のある家庭の娘なのですが、親が財産を失ったために、持参金がなく結婚ができないために同性愛にハマったように描かれています。

わたしはあまりウルフの生涯については詳しくないのですが、時代的にどうもそういう時代の犠牲者なのではないかと思ったりしました。
ウルフはたしか最後に自殺したのじゃなかったでしょうか?

こういったヨーロッパの、特に昔のイギリスなどは今の時代と違って、自由に恋愛もできないときに、寂しい心を慰めるために同性に恋人の役割を求めるのも無理はないような気がします。

そういえば、ハイミスで体よくつかわれる哀しい女性を描いた、「よくできた女」という小説も思い出します。


わたしもベルエポックといわれる時代の物語はものすごく好きです。実を言うとこういうアンシャンレジームの時代よりも好きかも…。


by sadafusa (2016-12-28 20:33) 

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